「認知」に働きかけるとは?

まずはおさらいから。
ブログ記事「考え方のクセを知ってストレスをやっつける(認知行動療法のイロハ)(1)」では、つぎの四つの観点からストレスを見つめるのがおすすめ、とお伝えしました。
(1)考え、思考
(2)気持ち、感情
(3)身体
(4)行動
の四つです。
例として、こんな場面。
「明日学校で、大切な英語の試験があるんだけど。試験でいい点が取れるか、すっごく心配。もう寝ないといけないのに、緊張して眠れないな…。ちょっと起きだして、もう少し勉強しようかな」
こんな時は、
「試験でいい点が取れるだろうか」→「考え、思考」
「すごく心配」→「気持ち、感情」
「緊張して眠れない」→「身体」
「もう少し勉強する」→「行動」
と分解します。
さて、上の場面で、もし「きっと試験では落第点だ」と「考え」たらどうでしょう。
もしかしたら「すごく心配」が「強い不安」に、「緊張して眠れない」が「胃が痛くなってくる」に、「もう少し勉強する」が「あきらめてゲームをする」に変わるかもしれません。
こんなふうに、「考え、思考」が変わると、「気持ち、感情」「身体」「行動」が変わることはよくあります。この四つは、密接に関連し、どれかが変わるとそれに伴って他のものも変わるものです。
これは、悪い方向への変化ですが、当然良い方向への変化もあり得ます。例えば、「今まで頑張ってきたのだから、きっと試験は大丈夫」と「考え」れば、「気持ち、感情」はいい変化があるかもしれません。それによって、「よく眠れた」という「身体」の変化につながる可能性もあります。
つまり、この四つのうちのどこかにアプローチすることで、他のものがそれに伴って変わり、結果的に全体の状況が良くなったり悪くなったりする可能性があるというわけです。
認知行動療法は、例えばうつや不安症といった「感情」に関する症状に効果があると証明されていますが、それは「考え、思考(認知)」や「行動」にアプローチすることで、うつや不安症といった「感情」を改善しようとする試みなのです。
「え、そんなこと?」と思われるかもしれません。しかし、このやり方は長く研究され、うつや不安症が改善したという証拠が積み重ねられています。うつや不安症だけでなく、強迫症、社交不安などの精神症状から、日常生活のストレスまで、メンタルヘルス上の様々な問題に効果があることが実証されています。
そんなわけで、認知行動療法の知恵を使うためにまずやるべきことは、「考え、思考」「気持ち、感情」「身体」「行動」の四つに自覚的になること、特に「考え、思考(認知)」に自覚的になることです。さらに、その「考え、思考(認知)」を眺めてみると、ある特徴を持っていることに気づくことになります。
次回の「認知行動療法のイロハ」では、「考え、思考(認知)」の気づき方の初歩的なトレーニングについてお伝えします。